治療について

当科における十二指腸内視鏡治療の特徴

当科における十二指腸内視鏡治療の特徴
十二指腸における内視鏡治療において最も重要なのは治療中の安全性の確保と治療後の偶発症予防です。

・安全性の確保
内視鏡治療を行う場合は、基本的に治療前に一度外来にて専門医による精査内視鏡検査を受けていただいています。病変を確認するだけではなく、実際の内視鏡治療を想定して詳しく観察します。こうすることで、難易度の高い十二指腸内視鏡治療をより安全に行う準備を事前に行います。サイズの小さな腫瘍(特に腺腫(せんしゅ))には通常の静脈麻酔下に内視鏡的粘膜切除術(EMR)を選択します(図4)。サイズの大きな、EMRでは切除が困難な腫瘍に対しては、高度で細かな技術を要する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を、全身麻酔下に体動を抑制したうえで行います(図5)。さらに十二指腸腫瘍の中でも神経(しんけい)内分泌(ないぶんぴつ)腫瘍(しゅよう)(以前はカルチノイドと呼ばれた腫瘍)などの粘膜の下に存在する腫瘍に対しては、強力な縫縮力を持った金属クリップ(over-the-scope clip;OTSC®)をあらかじめ病変の下に留置し、穿孔を予防した上で深く切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR with OTSC;EMRO)(図6)を積極的に行っています。このEMROという治療法は当科が命名し、本邦では初めて施行した治療法です(田島ら. Endosc Int Open.2021;09:E659-E666)。このように腫瘍の性質(腺腫、がん、神経内分泌腫瘍など)やサイズによって適切な切除法を選択し、安全に行うよう心掛けています。

・偶発症の予防~クリップによる創部の縫縮~
十二指腸内視鏡治療においては遅発性穿孔、後出血(切除後に出血すること)の予防が重要となります。そこで我々は病変の切除後に、通常のクリップや強力な縫縮力を持ったOTSC®などを用いることで切除した部分の傷(粘膜欠損部)を完全に縫縮し、術後の穿孔や出血を予防しています(図4、5)。  (文責  田島知明)
表在性非乳頭部十二指腸腫瘍に対するOTSC®併用内視鏡的粘膜切除術
図4.十二指腸腺腫に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)
表在性非乳頭部十二指腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とOTSC®を用いた切除後潰瘍底の完全閉鎖
図5.十二指腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とOTSC®を用いた切除後粘膜欠損部の完全縫縮
表在性非乳頭部十二指腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とOTSC®を用いた切除後潰瘍底の完全閉鎖
図6.十二指腸神経内分泌腫瘍(NET)に対するOTSC併用内視鏡的切除術(EMRO)